宝塚歌劇団・星組トップスターの礼真琴(れい・まこと)さん。
彼女の舞台をいくつか観ていくうちに、どうしても「言葉に残しておきたい」と感じました。
単なる感想ではなく、「誰かの心に何かを残す存在」として――。
その証を、記録として綴っておきたくなったのです。
新人公演のロミオが教えてくれたこと
最近観た過去の作品の中に、新人公演の『ロミオとジュリエット』がありました。
研5だった礼さんは、本役ではベンヴォーリオと愛を担当しながら、新人公演で初主演のロミオを演じていたんですね。想像以上に大変だったはず。
そのロミオは、まっすぐで、フレッシュさが印象的でした。そしてやはり、歌のうまさが際立っていました。
トップスターとして再演されたロミオ(2021年)では、少年らしさを残しつつも、人生の酸いも甘いも知ったような眼差しと、仕草の奥にある深い表現力、そして包容力ある歌声に変化していました。
素人ながらも、「変わった」とはっきり感じました。同じ役でも、こんなにも深まるのかと驚かされ、「積み重ねること」の凄みを見たように思います。
礼初めて宝塚を観たのは『RRR』
礼真琴さんを意識するようになったのは、実は映画『RRR』がきっかけ。
話題になっていたあの映画を観て、「面白い!」と思っていた頃、宝塚版の『RRR』が上演されることを知り、「これは観たい」と思ったのです。それが星組との出会い。
「一度は観てみたい」と思っていた宝塚――。
ちょうど良いタイミングだったので、ライブビューイングを観ることに。
『RRR』の舞台は、あの超大作をギュギュッと見どころを凝縮しながら、わかりやすく、楽しくまとめられてとても見応えがありました。
ショーでは大階段が登場し、「これが噂の!」と心の中で叫んだのを覚えています。
そして、ジェニー役の舞空瞳さんの笑顔も印象的でした。
でも、何より心に残ったのは――、礼真琴さんの「眼差し」だったのです。
礼真琴という人の「眼差し」
宝塚の千秋楽では、退団者への挨拶があります。
礼さんが彼女らに贈る言葉や表情には、一人ひとりへの深い想いが滲んでいました。
そこにあったのは、優しさ、敬意、愛。
舞台上で人柄が伝わってくる瞬間って、こんなにも胸を打つんだ――そう感じました。
ちょうど、宝塚にまつわる様々な報道があった時期。
それでも彼女は、信頼され、愛されているトップスターとして、堂々とその場に立っていました。
トップスターとして駆け抜けた日々
礼真琴さんがトップに就任したのは、まさにコロナ禍の始まり。
舞台が中止になったり、制限がかかったり…イレギュラー続き。
ただでさえ過酷なトップスターという役割。
それを前例のない困難の中でまっとうするというのは、想像を超える重圧だったはず。
しかも、その後も宝塚にまつわる問題が報道され。
どれだけのプレッシャーを抱えていたんだろう。
そして、どれだけの「覚悟」を持って立ち続けていたんだろう。
考えるだけで尊敬の気持ちが溢れてきます。
退団を前に
まもなく、その道のりにも一区切りが訪れようとしています。
正直、もっと観ていたい気持ちもあります。
でも今はただ、最後の瞬間まで楽しく、悔いなく、彼女らしく駆け抜けてほしい。
そう願わずにはいられません。
礼真琴さんが残したもの。それは舞台だけじゃない。
誰かの心に火を灯すような、生き方の背中。
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