仕事柄、クスリに関する話題には自然と目が向きます。近年、ジェネリック医薬品に関連する問題が相次ぎ、薬の供給不足も長期に渡っています。これらの背景には何があるのでしょうか?
信頼を揺るがせたジェネリックの事故
起こるはずがないと思われるような事件は突然起こります。
2020年12月。水虫などの真菌感染の治療に使われる飲み薬に、なんと睡眠薬が混入する事件が発生しました。しかも1回量を大幅に超える量の睡眠薬が混ざり込んでいたのです。それが原因となり残念ながらお亡くなりになった方や、車の運転中の事故もありました。
原因は、製造手順や品質検査が適切に行われていなかったこと。こうした問題が明るみに出たことで、ジェネリック医薬品への信頼が大きく揺らぎました。さらに他の製薬メーカーでも同じような問題で、行政処分が相次いだのです。
ジェネリック医薬品が普及した理由
ジェネリックが推進された背景には、増え続ける医療費の問題があります。
2021年度の予算案で一番多く使われているのは「年金」「医療」「介護」「子育て」などの社会保障費。

高齢化が進み、社会保障費の割合が他の項目に比べ大きく増えていく中で、医療費を抑えるためにもアメリカでは90%も使用されているジェネリックを普及させようという政策がとられたわけです。2013年には30%程のジェネリック使用率を2020年には80%まで増やそう!!と目標を掲げ、急速に市場が拡大しました。
2025年には団塊世代が後期高齢者となり、医療や介護の負担が急激に増えると予測されています。いわゆる「2025年問題」です。これに備えるためにも、ジェネリックの普及は急務とされたのです。
急速なジェネリック市場拡大の副作用
2020年9月時点でジェネリックの普及率は目標の80%近くに達しました。しかし、急成長した市場の中で品質管理の問題が浮上。
その結果、業務停止命令や出荷停止が相次ぎ、生産量が低下し品薄になる薬が増えました。病院や薬局では普段取り扱いのない薬の入荷は難しい事も出てきました。そうそうある事ではありません。これほど長期にわたり様々なクスリが供給不足になる事態は未だかつてありません。
物価高騰と薬価改定の影響
さらに、コロナ禍後の物価高や薬価改定による価格引き下げの影響も。採算が取れなくなり、長年使われてきた薬が製造中止になるケースも増えています。
こうした変化の中で、本当に必要な昔から使用されている比較的安価な薬も不足する事態も発生しています。咳止め薬の不足も、薬を必要とする症状の人が増え供給が間に合わないこともありますが、採算が合わない薬でもあります。
新しく高価な薬ばかりではなく、安価で効果のある薬の薬価を上げ活用する必要があります。2025年1月には最低薬価の3%引き上げ、不採算薬品で薬価を引き上げる対象に解熱鎮痛剤も追加されました。
私たちにできること
私たちができること。それは、健康であること!!健康寿命を延しませんか?
健康でいることで、医療費を抑えられます。老後資金の不安も少し軽減できるかもしれません。さらに、受診の頻度を減らせば、病院にかかる時間も節約できます。
また、自分の体調を自分で管理する力を身につけることも大切です。ストレスや食生活を見直すことで、未然に病気を防ぐことも可能になります。
クスリを扱う側からの視点
クスリを扱う者としては、ジェネリックがない方が在庫管理の面からもありがたいです。
例えば、同じ成分の薬でも「先発品」「先発品の口の中で溶けるタイプ」「ジェネリック」など、複数の種類を用意している薬もあり、管理が煩雑になります。また、期限切れで廃棄しなければならない薬が増えるリスクも。
さらに、同じ有効成分でも、製造メーカーによって「飲みやすさ」や「塗り心地」が異なることがあります。実際、先発品の技術力の高さに驚かされることもあります。
これからのクスリとの付き合い方
医療費の負担は今後さらに増える可能性があります。令和6年10月からは「選定医療」として、ジェネリックがある先発品を希望した場合、その差額の1/4を自己負担する仕組みが導入されました(対象となるクスリのみ)
これからの時代、医療制度の変化を知り、あなたにとって本当に必要な薬を見極めることが大切になります。医療費を抑えるためにも、健康管理を意識し、クスリとも賢く付き合っていきましょう。
あなた自身の健康のために、一度考えてみてはいかがでしょうか?
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